■ISMについて
店舗レイアウトの考え方というと、ISM(インストアマーシャンダイジング)が有名。
文字通り店内で行うマーチャンダイジングのことで、品揃えと陳列技術(棚に商品を並べる技術)と説明されることが多い。元々はIE(インダストリアルエンジニアリング)の応用から始まった技術であり、一般的には「小売店頭で、市場の要求に合致した商品および商品構成を、最も効果的で効率的な方法によって、消費者に提示することにより、資本と労働の生産性を最大化しようとする活動」と定義されています。
ISMは、店舗売場スペースを最も効果的な陳列や棚割、演出、販促を行うことで最大限に活用し、それによって、顧客の関心を引き、買い上げ点数および客単価を増加させ、最終的には売り場トータルの販売効率を上げるための技術です。
具体的には、”どう商品をお客の“目につく”ように置いていくことで客単価(お客一人当たりの購買量)を上げるか?“”店内隅々までお客が見て回るようにどう誘導することで買い物時間を伸ばすか?“”POPやディスプレイなどの店内演出などさまざまな“目につく”技術(スキル・アート)“を使いお客の購買意欲を高めていくか?”の3つを考えていきます。
■ISMを考える上の基本
あくまで、行動観察が基本
行動観察とは店内でのお客の行動を観察すること。行動を観察することで、購買に至らなくても、何に強い興味を持ったのかなど潜在的なニーズなどを把握することができます。
行動観察は、よくどこの棚の前に立ち止まったのか、どの商品を手に取ったのかを観察することと説明されることが多いのですが、実は、一番観察するべきはお客様の目の動きです。お客様は興味を持ったからと言って立ち止まるとは限りません、立ち止まるのは強い興味を持った場合だけです。目に留まったけれど立ち止まるまでは興味を引けなかった商品、興味がなくそのままスルーされた商品を把握することは次の売り上げを作る上で重要な情報となります。
また、人はものを単体で把握していません。実際に人間が認識しているのは、他の商品との差になります。これは無意識の行動なので、そうしていることを私たちの意識は認識していないのですが、単体で認識しているのではなく、必ず何かと比較しています。
この比較するという行為は、視界に同時に入ったものとしている場合もあれば、記憶の中のものと比較している場合もあります。どちらのモノと比較しているかは、視界に入ったものと比較している場合には目線は激しく動きますが、記憶のものと比較している場合には目線は宙を見たまま止まったママなので目の動きを見えれば把握することができます。
ある商品を見たとき、なにと比較しているかを予測できれば売り上げ向上の施策が打ちやすくなると考えます。(目が動いていれば、何と比較していることがわかりますので陳列位置の変更などが、目の動きが止まり記憶の検索を行っているのならば、理性が働きブレーキが働いていることになりますので、陳列方法をもっとインパクトのあるものに変える、ポップなどの文言で阻害要因の影響を無くすなどの施策が考えられるでしょう)
心理的な仕掛けを作る
「お客の平常心を奪う」というと抵抗感を感じますか? 全ての消費者が、衝動買いをせず堅い買い物(余計なものを買わず、必要なものを必要な時に必要な量だけ買う、しかも最安値で)をした場合、経済の1/3は縮小してしまうと言われています。
少なくとも少なくとも、卵の特売日だからといって、卵だけ買って帰られたのではお店は成り立ちません。
ついつい”余計なモノまで買ってしまった”という経験は誰でもお持ちの方が多いと思います。ついつい”余計なモノ”を買ってしまうのはお客様がそういう行動をするようにお店側が仕掛けているからです。
お客を馬鹿にしているって? 売れるためにすることと売上を作るためにすることは別の話。
売れるためにすることはお客に選ばれる理由を明確にすること。またそのためには高い顧客満足をお客様にしていただくことです。だから誠意を持ってお客様に相対することはとても大事なことです。
ただ一方、顧客満足と売り上げはリンクするとは限りません。卵を買いに来たお客様は特売と卵が帰れば満足される。しかしお店側から見ると卵だけを買われて帰られたのでは大赤字です。だからお店側は満足されたお客様の財布の口が緩むよう仕向けなければ生き残れないのです。
高級ブティックが広い空間に少量の商品だけ置かないのも、ドンキホーテが一見ぐちゃぐちゃに見える“量感”陳列をするのも、全く別のことをしているように見えますが、実は同じ仕掛け。非日常性の空間をつくることでお客の平常心を奪い理性によるブレーキが効かないように仕向けています。
お客様には満足していただけなければなりませんが、同時に満足したお客様についつい余計なものまで買わせる。この2つを同時に行わなければ売り上げは上がらないのです。
お店に「賑わいが大事」とはそういうことなのです。
効果はPOSデータ、ジャーナルのチェックで把握する
一つの施策(仕掛け)で上がる売り上げは高くて2割程度です。実際には施策を一つ一つ効果を見ながら行っていくことは時間的に難しいので、同時に幾つかの施策を打つことが多いと思います。その場合、売上金額の増額だけではどの施策が有効だったのかまでは把握できません。POSがあるお店ならPOSデータを、そうでないお店でもジャーナルを見て分析していくことが大事です。