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人間は理屈ではなく快感で動く

人間は理性的な動物だと思われがちですが、実は私たちの行動や感情は、脳の中で起こっている快と不快の原則に大きく影響されています。快と不快の原則とは、簡単に言えば、人間は快感を追求し、不快感を回避するという原則です。この原則は、生命の進化において重要な役割を果たしてきました。なぜなら、快感は生存や繁殖に有利な行動を促し、不快感は危険や損失から遠ざかるように仕向けるからです。

例えば、食べ物を見つけるとき、脳は飢餓感という不快感を作り出して行動を促します。食べ物を食べるとき、脳は味覚や満腹感という快感を与えて報酬を与えます。セックスするときも同様です。性欲という不快感が行動を起こさせ、オーガズムという快感が報酬となります。このように、脳は「飴と鞭」方式で私たちをコントロールしています。

しかし、この原則は単純ではありません。実際には、快と不快は別々のシステムであり、それぞれが独立して作用することもあります。また、全ての行動は快と不快の混在状況であり、そのバランスは個人や状況によって異なります。さらに、現在の快や不快だけでなく、未来の快や不快も影響します。例えば、将来の快のために今苦痛に耐えることもあれば、不快を回避した結果快を得ることもあります。どちらも未来の快や不快の予測に基づいています。

また、脳が作り出す快や不快は必ずしも客観的ではありません。私たち個人が持つ倫理観や価値観も影響します。例えば、自分の良心に従って行動することは善であり、それが報酬系を刺激して快感を与えます。逆に、自分の良心に反することは悪であり、それが痛み系を刺激して不快感を与えます。しかし、これらの良心や価値観も社会的な影響や個人的な経験によって形成されており、必ずしも普遍的ではありません。

さらに複雑なのは、快や不快は感覚だけでなく、感情とも関係していることです。感情とは、脳が出来事をどのように評価したかによって生まれる精神状態です。感情は、私たちが危険から遠ざかり、利益になるものに近づこうとする生存メカニズムの一部です。感情は、基本的に「良い」「悪い」しかない生理的・身体反応と、それを細かく混ぜ合わせて無限の精神状態を作り出す前頭皮質という脳の部分が協働して作られます。そして感情表現には必ず身体のアクションが伴います。

例えば、怒りという感情は、脳が自分の権利や利益が侵害されたと評価したときに生まれます。怒りは不快感を伴いますが、それは自分を守るためのエネルギーを高めるためです。怒りは身体を緊張させ、攻撃的な行動を起こさせます。しかし、怒りは必ずしも悪いことではありません。怒りは自分の正義感や価値観を表現することもできますし、不正や不平等に対して抗議することもできます。怒りは自分や他人のために変化を起こすこともできます。

このように、人間の行動や感情は複雑なメカニズムによって制御されていますが、その根底には快と不快の原則があります。この原則を理解することで、自分自身や他人の心理をより深く理解することができます。また、この原則を活用することで、日常生活やビジネスにおいても効果的なコミュニケーションや行動を取ることができます。

  

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