普段なにげなく「呼吸」と言っているが、この言葉を不思議に思ったことはないでしょうか。 息を吐く・息を吸うのだから、本来は「吐吸」と表現されるはず。なのに「吐」ではなくわざわざ「呼」と言う字を使っています。
「呼」とは辞書で調べると“喉を開いて、はあと大きな声を出す”とある。風呂に浸かった時に思わず“ハァ〜”と大きく息を吐いてしまいますが、あれのことです。
一方、吐く息と書いて“吐息と言う言葉があります。”落胆したり、ほっとしたりした時に思わず漏らす息、ため息”とあるように、短く浅い息のことです。
つまり、「吐吸」では息は短く浅いものということになってしまいます。息は本来ゆったりと行うべきモノなので、「吐吸」ではなく、「呼吸」と表現されるようになったのでしょう。
ところで普段の生活の中では、緊張したりして肩に力が入ってしまう時があります。肩に力が入ると肩が上がる。肩が上がる肋骨が持ち上げられて胸郭が狭くなり息が浅くなります。また、グッと奥歯を噛み締めて我慢しなければならない時。この時、腹筋にもグッと力を入れ緊張させているので、横隔膜の動きが阻害され息が浅くなります。
つまり、息は短く浅くなってしまい、「吐吸」の状態になってしまっているのです。
息が浅くなると、動きは鈍くなるし思考力も低下し、また疲労もすぐにやってくる。そうなると表情は硬くなるし、その結果対人関係もギクシャクしてくる。ことがスムーズに運ばなくなると、なんとかしようと頑張るので、ますます肩や腹筋を緊張させていき、悪循環に陥っていく・・・・。
本来普通に「呼吸」をしていれば、自然と体は緩み緊張はしない。悪循環を止めるには、「吐吸」を「呼吸」に戻さなければならないのです。
“正しい”呼吸をするために
腹の力を抜く
「直感」と言う言葉は英語では、“Gut Feeling”と言う。Gutは内臓という意味なので直訳すれば“内臓感覚”ということ。強いストレスで、グッと力を入れ腹筋を固くしたままの状態では、内臓を感じ取ることができないということもあり、普段の呼吸では腹筋は緩んだ状態でなければなりません。腹筋が緩めば横隔膜が上下に動くようになるので、自然と腹式呼吸となり息は深くなります。 腹式呼吸というと、順式(吸う時はお腹が膨らみ、吐く時はお腹が凹む)や逆式(吸う時はお腹が凹み、吐く時はお腹が膨らむ)など色々な方法がありますが、普段の呼吸ではそこまで意識する必要はなく、ただお腹の力を抜き横隔膜を大きく上下させることだけに意識を向けるだけで良いです。
▷胸式呼吸について
呼吸が浅くなるのは肩に力が入ってしまうことが本来の原因。人によってはなかなか肩の力を抜くことは難しい。
そこで直接の原因は胸郭が狭いこと、胸が詰まった状態にあるので、胸式呼吸(胸で息をする。肋骨の間の筋肉を広げたり縮めたりすることで呼吸を行うこと)を行うことで、胸郭を広げ、胸の詰まりを解消し息を深くする。
本によって胸式呼吸は悪いことのように書いてあります。確かに胸式呼吸(肋骨を動かす)だけでは呼吸は浅くなってしまうので、胸式呼吸だけを行うのは良くないことだと言えるでしょう。しかし呼吸運動とは、どれだけ肺を膨らますことでもあるので、腹式呼吸で横隔膜を下げることとともに、胸式呼吸で肋骨を広げることでより深い息をすることができます。うまく肩の力を抜くことができない人は、普段の呼吸に胸式呼吸も取り入れると良いでしょう。
ガンコ首とガマン首
首の後ろが凝った状態をガンコ首と言います。肩の力が抜けず、首の後ろが凝った状態になると精神的には頑固になってしまう事からそう言われます。また反対に首の前部分、喉から顎にかけて凝った状態をガマン首と言います(グッと奥歯を噛み締めた状態になるので首の前側が緊張したままになる)。
俳優養成所では、上手く発声できないのは首の筋肉が緊張し、その結果声帯が緊張し気道が狭くなってしまっているのが原因だと教えられます。そのため、首の筋肉は下半身の筋肉をつながっているそうで、特に下半身を使った運動を主体に行います(大きく動かすことで筋肉をほぐすことを目的としています)。息が浅くなる原因が肩に力が入ること、グッと奥歯を噛み締めることにあるので、首の緊張を取る運動(下半身の筋肉を動かす運動)を普段から取り入れることはとても有効だと考えます。
そのほかに運動ではないが腕のツボ押しが良い。肩こりや首こりのツボは背中や首にもあるが、腕のツボはつり革に掴まりながら通勤途中などちょっとした隙間時間にでも押せるので都合が良い。 代表的なのは曲池や手三里などがあるが、それ以外にもあり、腕のあちこちを押してみて、痛いところがあればそこはツボであるので、グリグリと押してみて肩や首の感覚が軽くなればそこは肩こり・首こり解消のツボである。