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価値を付け加える:機能的価値

“付加価値”とは、「価値」を付け加えること。さて、「価値」という言葉。あなたはどう説明する?何をどう付け加えるかは、あなたがどう説明するかで大きく変わる。

「価値」を辞書で調べると“その物事がどれくらい役にたつか、大切かという程度をあらわしたもの。”(ベネッセ表現読解国語辞典より)とある(辞書によっては「役に立つ」「大切である」のほかに「特別な」「重要な」と表現するものもある)。
つまり、あるものが、その人にとって役に立つモノ・大切なモノ・特別なモノであれば価値があると判断され、それほど役に立たない、あまり大切でないなどと評価されれば、それの価値は下がるということ。

さて、この“どれだけ役に立つ、大切・特別であるのか”は、何を基準にそう評価するのかによって様々な考え方がある。少なくとも経済学では、「価値」について労働価値と使用価値の二つの定義があり、それに応じて全く違う2つの「価値」の付け加え方がある。

労働価値について

労働力の投入量(どれだけ手間暇をかけたのか、企業努力を費やしたのか)によって「価値」が付け加えられたかどうかという考え方。素人がDIYで作った家具とベテランの職人が丹精を込めて作った家具とでは、作り上げる過程で投入される労働量(手間暇・培った技術)が違う訳で、その結果品質や使い心地が違ってくる。当然その品質や使い心地によって価値(どれくらい役にたつか、大切かという程度)は変わってくる。

モノを作る現場ではこの労働価値の考え方に立って付加価値は計算される。一般には次のように定義されている。

企業がその生産活動の結果として、新たに創出した価値のことである。すなわち、企業が外部から購入した材料に新たな価値を付加して販売したとすれば、その新たに付加した価値部分が付加価値である。それはまた、売価から外部購入の材料費や用役の価額部分を差し引いたものとしても計算可能である。 森田哲彌・宮本匡章編(2001)「会計学辞典第四版」中央経済社

例えば、鉄の板を買ってきて、ベテランの職人がバーナーで熱したり、道具を使って曲げたりしながら製品を作った場合、付加価値は投入された人件費や生産費などの経費と頑張った報酬としての利益を足したモノであり、また製品の値段から原材料費(天板代とバーナーのガス代)を引いたモノでも表すことができる。

使用価値について

もう一つは、その商品を購入し使用することで得られるメリット・ベネフィットが高いかどうかで「価値」があるかどうかを判断する考え方。お客様が商品を買うのは、その商品から得られるメリット(その商品から得られる効果)が欲しいから。したがって、得られる多くのメリット(ベネフィット)・高いメリット(ベネフィット)が得られるモノとそうでないモノとでは価値(どれくらい役にたつか、大切かという程度)が違ってくる。

※メリット(直接得られる効果)とベネフィット(効果からもたらされる結果)の違いをダイエットに例えるなら、10kg痩せるというのがメリットで、その結果、今まで這入らなかったジーンズが這入るようになる、というのがベネフィットである。

モノを売る現場では使用価値にたった考え方で付加価値は見積もられる。なぜならお客様から選ばれるためにはよりお得でなければならないのだから。なお、ここでいうお得感を経済学では消費者余剰という。

お得感の作り方.価値ー価格の差が競合よりも大きくなければならない。

一方企業は、儲け(=利益)が出なければ商品を作ることも販売することもしない。したがって付加価値はお客様にとってはお得感があるモノであると同時に、企業にとっては儲け(=生産者余剰)があるものがあるモノでなければならない。従ってモノを売る現場での付加価値は

付加価値=消費者余剰+生産者余剰=消費者が得られる価値−生産コスト

と見積もられている。

お得感の作り方.価値ー価格の差が競合よりも大きくなければならない。

労働価値の考え方は、各経費等から計算できるので客観的価値とも呼ばれている。この考え方に立った付加価値は正確に求めることができる一方で、企業の立場のみで感がられているため、消費者にとっての付加価値が無視されている。

使用価値の考え方は、価値の高い・低いはその人の主観によって決められるため主観的価値とも呼ばれている。どれくらいの価値に感じているかは官能テストやアンケートから推測するしかないため正確とは言い難いが、消費者にとっての付加価値について考慮されたモノとなっている。

ところで、例えばト○タ自動車やパナ○ニックなど大手企業が、自社製品の部品を購入する際には、その部品の品質を重要視する。しかし、ト○タ自動車やパナ○ニックの製品を買う一般顧客は、その自動車や冷蔵庫から得られるメリットやベネフィットを重要視する。つまり、品質(労働価値)か、メリットベネフィット(使用価値)かは、買い手がどちらを重要視しているかで変わることになる。

また昔のモノが無かった時代には、価値の判断は品質が高いかどうかだけだったが、今のものが余った時代では、品質での判断よりもメリット・ベネフィットで判断されることが多くなった。

“品質が良いものを作ろうとするから、自社製品の開発は失敗する?”とは言い過ぎだが、例えば機械金属部品を加工してきた企業が自社製品を開発する場合、価値及び付加価値の考え方は変えなければならない。

     

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