街の電気屋さんが潰れない理由

どんなお店も商品も、お客様からすれば選択肢の一つでしかない。
お母さんが夕食の買い物に行く、「今日はなににしようかしら」「そういえば〇〇スーパーはお肉が今日やすかったわね」とどこで何を買おうかと選択をしていく。
あるメーカーで新製品を開発した、部品はどこから調達しようかと取引先を選択する。買うという行動は選択する行動なのだ。
あなたの会社の製品・商品に明確な強みがあり、十分に価値が付け加えられており、誰からも選ばれる存在であれば問題はない。ただ社会のあり方が変わり、例えば海外企業など多くの競合が生まれたことで差別化できなくなるなどがあると、これまでのように選ばれる理由が無くなってしまう。
例えば、企業城下町にある部品メーカー。これまでの実績による信頼と技術力の高評価評価、近くにあり要望に即応してきたことで選ばれてきた。しかし大手工場が海外に移転してしまえば、当社がこれまで選ばれてきた近さという理由がなくなり、移転先の近くに当社と同等の実績と技術力を持った企業が存在すれば、わざわざ遠くの当社に仕事を頼む理由は失ってしまう。
また例えば、これまで安さと買い物のしやすさで選ばれてきた商店街の八百屋。近くに大手スーパーが進出してきたのなら、自店よりももっと安くて買い物がしやすいお店ができたことになり、選ばれる理由は失ってしまう。
生き残るには、これまでとは違った新たに選ばれる理由が必要になってくる。
新たな選ばれる理由づくりで成功した事例の代表が“街の電気屋さん”。ケーキ屋さんやお惣菜店など自分のところで商品を作っているお店なら、他にはない新商品を開発することで選ばれる理由を作ることができる。しかし、電気屋さんの場合、価格や品揃えの豊富さでは大手家電量販店には敵わない。したがって、生き残るには価格や品揃え以外の選ばれる理由が必要になってくる。
街の電気屋さんが生き残ったのは「より身近な存在」に特化したから。
頼まれれば電球一個から配達し、高齢者のご家庭では取り替えまでやってくれる。大手家電で商品を買った場合、自分で運んで配線も自分でやらなければならないが、街の電気屋さんに頼めば全てやってくれる。商品力では敵わなくても、サービス力で選ばれる理由を作り出し生き残った。
また利便性だけではなく、顧客との親密な人間関係など心理的価値を付け加えたこともその理由だろう。
売れている魚屋さんは、”煮付けにするとうまいよ”と魚と一緒に情報も売っている。デカ盛りのお店やインスタ映えがよいお店などがよくテレビなどで取り上げられている。
売れなくなったのは選ばれなくなったから。これまで選ばれてきた理由を失ったのなら新たな理由を作り出すしか生き残る術はない。機能性で勝てないのなら、心理的付加価値で。モノ(製品や商品)で差別化できないのなら、サービス力や対応力など提供の仕方で。他者よりも、どれだけ役に立つ・大切・特別・重要なのかその理由を作り出し、認知させていかなければならない。
今井 彰.(→プロフィール)
Con(隣に)+sult(座る)+ant(物)・中小企業診断士
兵庫県尼崎市を中心に活動しているコンサルタント。あえてcon(ともに)+sult(座る)+ant(者)と名乗っている。なぜなら、“どうしたんだい?”と言って悩んでいる人の隣に座り、一緒になって考えたりアイデアを出したりするのがコンサルタントの本来の姿だと考えるから。対応範囲は小売飲食の売上向上策から製造業の販路開拓まで、またそれに付随する人材育成。30年以上に渡り、モノを売る技術(買う気・やる気の作り方とその伝え方)について実践の中でノウハウを培ってきた。同志社大学商学部卒。