ホイラーの法則

物を売るには、最初に品質の高さを実感させる、使用することで得られるメリット・ベネフィットをイメージさせることから話を始める必要がある。

そのための代表的な方法として有名なのがホイラーの5つの法則である。

□ ホイラーの5つの法則

  1. ステーキを売るな、シズルを売れ!
  2. 手紙を書くな、電報を打て!
  3. 花を添えて言え!
  4. もしもと訊くな、どちらと訊け!
  5. 吠え声に気をつけよ!

独特の用語で判りづらい。私なりの解釈をしていくと次の通りだと考える。

■ ステーキを売るな、シズルを売れ!

「モノそのものを売るのではなく、それを手にいれることで得られるメリットを具体的にイメージさせろ」という意味だと考える。。“シズル”とは、ステーキをジュージュ−と焼く音のこと。ここで言う“シズル”とはあなたの売り込みの最大のセールスポイント、言い換えるなら、お客がそれを買いたくなる主要な理由のことである。

ホイラーは書籍の中で、”気の利いた給仕なら、シャンパンを売るのではなく、シャンパンの泡を売るのだということを良くしっているはずである。食料品の店員は、漬け物を売るのではなく、そのシワを売っている。コーヒーを売るのではなく、その風味を売っている。保険のセールスマンは危険に対する安心感を売っているのである。”とも言っている。

セールスマンが一生懸命説明する時、見込み客の心をよぎるのは、「それは、私にどう役にたつのだろうか?」という大きな疑問である。したげって、セールスはその疑問に答えられるような形でなされなければならない。絶えず、お客の目を通して自分の商品を見る能力を身に付けなけばならない。

そのためには、自分の売ろうとしている商品をつくづくとみることだ。そして、見つけ出したシズルを1つ、5つ、10、20と見込み客に重要だと思う順にリスト化しておく必要がある。

まず、シズルをぶつけることによって、客の欲望を喚起する。そうすれば、必要な技術的な説明にも楽に入っていけるというのが、第一の法則の主旨だと考える。

■ 手紙を書くな、電報を打て!

説明の仕方は、端的に明確に。できるだけ少ない言葉で、「見込み客の”直接の好意的な注意”を惹き付けよ」ということである。

最初の言葉で見込み客の関心を掴むことができなければ、彼らは、例えその場を立ち去らないにしても、精神的にはあなたから離れてしまうだろう。

人は「即断」しがちなものである。彼らは最初の10秒間で決めてしまう。そしてまた、あなたの売り込みに対する彼らのその後の態度を決めてしまうのである。

最初の10語はそれに続く1万語よりも重要だ。見込み客に会ったときには、くどくど説明したり、口ごもったりしないで、最初の言葉ですばらしい第一印象を与えるように努めなければならない。すべては、あなたが最初の10秒間に言うことにかかっている。

言葉はできるだけ少なくしなければならない。したがって、言葉は「手紙」ではなく「電報」でなければならない。最初の10秒間に、簡潔な「電報」をぶつけさえすれば、次にフォローアップするチャンスが出て来るだろう。

■ 花を添えて言え!

ホイラーは書籍の中で、この言葉の意味は、「あなたの言うことに証拠を添える」ことだと述べている。「”お誕生日おめでとう”という場合でも、花束を添えて言えば、あなたの気持ちがよりよく相手に通ずるものである。いまここに、10秒間の時間と自由に使える2本の手がある。それを使ってあなたの言葉を補強することだ。」と説明している。

さらに、ホイラーは「手で話すのか?と驚くことはない。その通り。もしあなたが、手を上品に用いることができるのなら、手を使って悪い道理はない。手で身振りをし、手を活発に動かしなさい。手をたたき・手をこすり・手を動かし・手を開き・手を閉じなさい。あなたが動いて見せれば、相手も動くのだ。あなたが売り込もうとするものを、見込み客に見せ!触らせ!つかませ!扱わせ!場合によっては嗅がせたり、味あわせたりすることだ。あなたの両手をあなたのために生かしなさい!」と言っている。

ホイラーはまるで一つのショーであるかのように、感情の伴った生き生きとした動作や表情で言葉を補強しなければならないと言ってる。

■ もしもと訊くな、どちらと訊け!

端的に言えば、「相手が買うことを前提にして話を進めろ」ということだ。見込み客に対して常に(特にクロージングにあたっては)、買うか買わないかと迫るべきではない。これとあれのどちらかを選ばせるように、慎重に言葉を組み立てなければならないということ。

なお、ホイラーは書籍の中で、「セールスマンには2つのタイプがある。一方は、話すときに強い言葉をつかったり、断定的な言い方をするセールスマン。他方は、疑問形の言葉をつかって巧みに相手の興味をそそり立てるセールスマンである。この絶叫型になるか疑問符型になるかによってセールスマンシップの敗者になるか勝者になるかが別れるのである。とも言っている。

勝者になるためには、疑問符型でなければならないが、質問(疑問形の言葉)を使う際には、これとあれのどちらかを選ばせるように、言葉を組み立てる必要がある。

■ 吠え声に気をつけよ!

声のトーンや言葉遣い、ジェスチャー姿勢はT.P.Oにあわせて使い分けることの重要性を説いている。その場にあった声の調子が、言おうとすることを、より速く、より忠実に相手に伝える。

ホイラーはまるで一つのショーであるかのように、感情の伴った生き生きとした動作や表情で言葉を補強しなければならないと言ってるが、特に声の調子の重要性について次のように述べている。

「機械的で単調な調子に陥らないことだ。抑揚を考えよ!強調点を逃がすな!時には低くー時には高く、ゆっくりと、あるいは劇的に速く、声のテンポを変えなさい!こうすることによって、あなたの話は聞き手に興味深く伝わるのである。ただし、声が風変わりになってはならない。この場合は、聞き手の注意は、話す内容ではなくて、声そのものに奪われてしまう。」

「微笑みを含んだ声で話しなさい。しかしその微笑みは、おとぎ話にでてくるオオカミのような、不誠実なものであってはならない。もし、微笑みかたが悪かったり、荒々しく見えたり、意気消沈しているように見えたり、疲れているように見えたり、高圧的に見えたり、自信過剰に見えたら、あなたは、見込み客に気をつけろという 信号をおくっているようなものである。」

ホイラーは、静まり返った夜に声を出して本を読み、耳に手を当てて自分の声を聞くことを勧めている。また、声の調子に幅を持たせる訓練も重要視している。

ホイラーはこの5つの法則を”保証付き販売法”と呼んでいた。もともとは店頭に立っている販売員向けに作られたものであるが、少しアレンジを加えれば、全てのセールスの現場で有効な方法だと私は考えている。

Con(共に)+Sult(座る)+Ant(者)・中小企業診断士・ビジネスコーチ

1968年生。同志社大学商学部卒。得意分野は売上向上策と人を育てる技術(相手を買う気・やる気にさせる仕掛けづくり)。 将来起業することを目指し大手流通業に就職。店長として店舗レイアウトや店内販促物の作成、コーチングを使ったスタッフ教育で評価を得ていた。 ビジネスコーチ・流通系コンサルタントとして独立。小売店や飲食店の売上向上策について支援を行う。一方公的支援機関にて販路開拓や創業・事業承継の支援に携わる。なお、コンテンツには個人的な見解や意見が入っています。あくまで参考としてお読みください。