選ばれる理由の作り方

あなたはどちらのお店を選ぶだろうか?

給料日の翌日、あなたは会社の同僚とちょっと贅沢をしようとランチに出かけた。がっつりステーキでもという話になりお店を探していると次の看板メニューのあるお店を二つ見つけることができた。

A店:本日限定ステーキ定食
松坂牛(A5ランク)ステーキ200g980円

B店:ステーキ定食
オーストラリア産ステーキ200g1280円

最近は、赤身の肉を好まれる方もいるので一概には言えないが、単純に判断したとすると、多くの方はA店を選ぶだろう。なぜなら、A店のほうがより「価値がある」ものをより安に価格で食べられることができ、”お得”だからだ。

当たり前のことだけど、お客はより”お得”なほうを選ぶ。

価値と価格の差が他のモノよりも広い商品を見ると私たちは”お得”と感じる。どうこの差が広いと認識させるかが選ばれるために考えることである。

価値と価格の差を広げる方法(戦略)は次の4つ。

□低価格戦略
言葉の通り、「より価格の低いモノを提供する」こと。同じ価値の提供を受けるのなら、より価格の安い方が“お得”と感じる。より安いということで他のモノと区別をされる。
□差別化戦略
言葉の通り相手を“差別”すること。差別とは「差をつけて区別する」ことである。当社の方が優れている、もしくは競合商品のほうが劣っているので、もはや別物であるとお客様の心の中に植え付けること、優位性(優越的地位)を確保することである。差別的優位性がある分価値が上がるので、同じような価格なら、当社のモノが”お得”であるということであるということ。
ここで注意しなければならないことは、競争力強化とは違うことだ。競争力強化とは相手と同等の力をつけて十分に戦えるようになること。同等の力では相手に対して差別的優位性を築くことはできない。
□ポジショニング戦略
これも「差をつけて区別する」方法であるが、差を上下でつけるのではなく、横にずらすことで作る。これまでとは違う新たなメリット(満足・喜び)を提供することで、それまでのモノとは違った新たな立ち位置(=ポジショニング)を確保すること。これまでにない新たな魅力を創出することで価値は上がる。代表的な例が昔のラガードライ戦争。ビールといえばラガーだった時代にドライという新たなテイストを提供することで市場を奪った。さらにそれまでのビールが”食前酒”だったのに対し、プレミアムモルツは”食中酒”という新たな立ち位置を築くことに成功した。
□ブランディング戦略
人は本当に自分にとって価値があるモノであれば高くても買う。ブランドとは、家畜に押す”焼き印”を意味する古ノルド語のBrandrから来た言葉で、ブランディングとはお客の頭の中に特別なものであるというイメージを焼き付ける行為である。差別化戦略が機能的な優劣で、ポジショニング戦略が製品の定義といった認識による差を作り区別するのに対し、ブランディング戦略はその人にとってどれだけ重要で存在が大きいかといった心理的な差によって区別する。ブランディング戦略というとブランド品の販売をイメージされる方も多いだろうが、街の電気屋さんが、「より身近な存在」に特化することで生き残るのもそうである。

競合よりも価値と価格の差を広げることができなければ、生き残ることはできない。安さで差を広げることができないのなら、機能であれ、新たな魅力であれ、心理的な特別感であれ価値を上げるしかない。そして、それが今のビジネスで無理ならば、新たなビジネスを立ち上げるしかないですよね?

Con(共に)+Sult(座る)+Ant(者)・中小企業診断士・ビジネスコーチ

1968年生。同志社大学商学部卒。得意分野は売上向上策と人を育てる技術(相手を買う気・やる気にさせる仕掛けづくり)。 将来起業することを目指し大手流通業に就職。店長として店舗レイアウトや店内販促物の作成、コーチングを使ったスタッフ教育で評価を得ていた。 ビジネスコーチ・流通系コンサルタントとして独立。小売店や飲食店の売上向上策について支援を行う。一方公的支援機関にて販路開拓や創業・事業承継の支援に携わる。なお、コンテンツには個人的な見解や意見が入っています。あくまで参考としてお読みください。